経営事項審査「Z」の評価項目を徹底解説|技術職員数と元請完成工事高で評点アップ!

「せっかく技術力のあるベテラン社員がいるのに、経審の評価がイマイチだ…」 「元請けの実績は多いはずなのに、なぜか元請完成工事高Zの評点が低い…」

建設業を営む経営者の皆さま、こんな疑問はありませんか?

公共工事を受注するために欠かせない経営事項審査(以下、経審)において、技術力は会社の信頼性を測る上で非常に重要な要素です。経審の総合評点(P点)を構成する要素のうち、**Z(技術力)**は、会社の技術力を客観的に数値化し、評価する項目です。しかし、その評価基準は複雑で、単に技術者が多ければ点数が上がるというわけではありません。

この記事では、建設業専門の行政書士として、経審の**Z(技術力)**に焦点を当て、その評価項目である「技術職員数」と「元請完成工事高」について、評価基準から具体的な評点アップのポイントまで、わかりやすく解説します。この記事を読めば、貴社の技術力を最大限に活かし、経審の評点を向上させるための道筋が見えてくるはずです。


📝 目次


Z(技術力)とは?|評価項目の全体像

経審の総合評点(P点)は、以下の5つの評価項目で構成されています。

  • X1:完成工事高
  • X2:自己資本額・利益額
  • Y:経営状況
  • Z:技術力
  • W:その他・社会性等

このうち、**Z(技術力)**は、企業の技術力と施工能力を評価する項目であり、以下の2つの要素で構成されています。

  • 技術職員数(Z1):会社の技術者や技能士の数を評価します。
  • 元請完成工事高(Z2):元請けとして行った完成工事高の実績を評価します。

これらのZ1とZ2の合計点が、最終的なZ点として算出されます。**Z(技術力)は、経審の総合評点に占める割合が25%**と非常に高く、完成工事高(X1)や経営状況(Y)と並んで重要な項目です。技術力は建設業の根幹であり、その評価を上げることは、公共工事の受注だけでなく、会社のブランド価値向上にも繋がります。


技術職員数Z1を徹底解説|資格と経験が評点の鍵

技術職員数(Z1)は、会社の技術者の量と質を評価する項目です。単に技術者が多ければ良いというわけではなく、その技術者が持つ資格経験が細かく1点~6点に点数化されます。以下はその技術職員数値表です。

また、下記技術職員数値表より技術職員の資格にはランクがあり、高難度の資格や複数の資格を持つ技術者は、より高い点数が加算されます。例えば、1級の施工管理技士は2級よりも高得点です。

ここで注意が必要なのは*一人の職員につき技術職員として申請できる建設業の種類は2業種までとされているところです。

経営事項審査において、技術者一人につきカウントできる業種は最大2つまでと決まっています。複数の国家資格を持っている技術者でも、どの業種の技術職員として評価対象にするか、戦略的な検討が必要です。

たとえば、土木施工管理技士と建築施工管理技士の資格を持つ方がいるとします。この方を「土木工事業」と「とび・土工・コンクリート工事業」の技術者としてカウントする場合、建築施工管理技士の資格を持っていても、「建築工事業」の技術者として評価することはできません。

評価される技術職員とは?

建設業許可を持つ技術者(営業所技術者及び現場での監理技術者・主任技術者)であれば、誰でも点数の対象になるわけではありません。経審で評価される技術職員とは、一定の国家資格や実務経験等を保有するものであり、審査基準日以前に6か月を超える恒常的な雇用関係があり、かつ、雇用期間を限定することなく常時雇用されている者をいいます。

  • 常勤性:会社の常勤職員であること。技術職員は、経営事項審査の審査基準日以前から6ヶ月を超えて継続的に常勤している人が評価の対象となります。たとえば、9月30日が審査基準日の場合、その6ヶ月前の3月31日から継続して常勤している必要があります。この「継続的な常勤性」を証明するには、ほとんどの場合、社会保険の標準報酬決定通知書に名前が記載されているかで判断されます。この証明方法を覚えておきましょう。
  • 国家資格等:1級や2級の施工管理技士、建築士などの国家資格等を保有していること。
  • 雇用期間:在籍出向社員については認められていますが派遣社員については認められておりませんので注意が必要です。

Z1の計算方法のポイント

Z1の計算は、技術職員の資格区分に応じて決められた点数を合算して行われます。

  1. 有資格者(1級、2級)の点数:技術職員が保有する資格の種類(例:1級土木施工管理技士、2級建築士)に応じて点数が割り振られます。
  2. 実務経験者の点数:資格を持たない技術職員でも、一定の実務経験があれば点数に加算されます。
  3. 講習受講者の点数:CPD(継続学習)などの講習受講も加点対象となります。
  4. 技術職員数値として合算:技術職員数値を合算しZ1評点を以下の表式に当てはめて計算いたします。

[ケーススタディ] A社とB社は、どちらも技術職員が10名います。

  • A社:1級施工管理技士が3名、2級施工管理技士が7名。
  • B社:2級施工管理技士が5名、実務経験者のみが5名。

この場合、A社のほうが質の高い技術者を多く抱えていると判断され、技術職員数Z1の評点はA社のほうが大幅に高くなります。


元請完成工事高Z2を徹底解説|実績を最大限に評価させる

**元請完成工事高(Z2)**は、直近2年または3年の平均で行われますが、これは完成工事高(X1)の選択と連動しますので、独自に選択することはできません。また、元請完成工事高を評価する項目ですので下請けの工事は含まれず、発注者から直接受注した工事のみが評価対象となります。

なぜ元請工事高が重要なのか?

公共工事の発注機関は、元請けとしての実績を非常に重視します。元請けとして工事を完遂することは、発注者との折衝、下請けの管理、資材調達、工程管理など、高度なマネジメント能力を証明するものです。

音楽に例えれば、元請けとして工事を成功させることは、オーケストラの指揮者のようなものです。すべての演奏者(下請け業者)をまとめ、一つの美しい音楽(完成物)を作り上げる能力が評価されます。

Z2の計算方法と評価のポイント

Z2の計算は、元請完成工事高の額に応じて決められた係数をかけて算出されます。金額が大きければ大きいほど、高い評点を得られます。

  • 評価対象期間:原則として、直前2年間又は3年間の平均元請完成工事高が評価対象となります。
  • 工事規模:大規模な元請工事を数多くこなしているほど、点数が高くなります。

経審における元請工事高の注意点

元請工事高を正しく評価させるためには、以下の点に注意が必要です。

  • 契約書の確認:発注者との間で直接締結した請負契約書を必ず保管してください。
  • 完成工事高の計上:完成工事高は、確定した時点で適切に計上することが重要です。

Z点アップのための具体策とチェックリスト

1. 技術者資格取得への支援

  • 資格取得費用の補助:技術職員が1級・2級の施工管理技士などの国家資格を取得する際の費用を会社が補助する制度などの導入を検討しましょう。
  • 研修・講習の奨励:CPD講習や技術力向上のための研修受講を積極的に奨励します。

2. 元請け受注の強化

  • 営業戦略の見直し:下請けのみの受注から脱却し、元請け案件を増やすための営業戦略を立て直しましょう。
  • 発注者との関係構築:公共工事の発注機関や民間企業との間で、信頼関係を築き、元請けとしての実績を積み重ねていくことが重要です。

3. Z点アップのための実務チェックリスト

以下のチェックリストで、貴社のZ点対策がどの程度進んでいるか確認してみましょう。

チェック項目確認内容改善策
技術職員Z11. 1級・2級の国家資格を持つ技術職員は何名いますか?資格取得の計画を立てる。
2. 技術職員はすべて雇用常勤性を満たしていますか?常勤確認書類(健康保険証など)を整備する。
元請工事高Z23. 過去2年間・3年間の元請完成工事高はいくらですか?元請け契約の実績を正確に集計する。
4. 元請け案件の獲得に向けた具体的な戦略はありますか?営業戦略を見直し、発注者との関係を強化する。
書類管理5. 技術者資格証や請負契約書は適切に保管されていますか?経審申請に備え、必要書類を整理・管理する。

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まとめ|技術力を評点に変える

Z(技術力)は、経審において企業の真価を問う重要な項目です。技術職員数Z1と元請完成工事高Z2の評価を高めることは、単なる点数アップに留まらず、会社の技術力を外部に証明し、ブランド価値を高めることにもつながります。

「技術力があるのに、経審の点数が低い」と感じているなら、それは技術力そのものが低いのではなく、評価されるべきポイントが適切に書類に反映されていないだけかもしれません。

経審の評価項目や申請手続きは複雑ですが、専門家である行政書士に相談することで、貴社の技術力を最大限に評価に変えることができます。

経審に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

[関連ページ]

「技術力(Z点)の計算方法は経審Z点の計算方法を実例で確認」で具体例付きで解説しています

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確認クイズ(3問)

経審 Z点 知識確認クイズ

公共工事受注のカギとなるZ点(技術力)について、記事の内容から3つのクイズを出題します。あなたの知識を試してみましょう!

【第1問】
記事によると、Z点(技術力)は、経審の総合評価点(P点)のうち、何パーセントを占めていますか?

  • 25%
  • 15%
  • 50%

【第2問】
記事によると、経営事項審査において、一人の職員につき技術職員としてカウントできる建設業の種類は最大いくつですか?

  • 1業種のみ
  • 2業種まで
  • 3業種まで

【第3問】
記事によると、経審で技術職員として評価されるために必要な「常勤性」を証明する一般的な方法は何ですか?

  • 給与明細書の提出
  • 雇用契約書の提示
  • 社会保険の標準報酬決定通知書に名前が記載されていること

全問終了です!お疲れ様でした!

Z点アップは、企業の技術力を正当に評価させ、公共工事の受注を有利にするための有効な手段です。NOBU行政書士事務所が、貴社の技術力を最大限に活かす経審対策をサポートします。お気軽にご相談ください!

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執筆者情報

執筆者:代表  林 信武(はやし のぶたけ)

所属: NOBU行政書士事務所

プロフィール:

建設業許可・経営事項審査を専門にサポートしていきます。

また、ドローン飛行許可申請・法務相談も多数対応しており、

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日本商工会議所簿記1級を取得しており、法律と会計両方の視点から建設業者様の経営をサポート。

「わかりやすい」をモットーに、法律や会計の難しい内容を噛み砕いて解説させていただきます。