経審で高得点を目指す|自己資本額と利益額(X2)を徹底解説!

「公共工事の入札に参加したいけど、経審の点数がなかなか上がらない…」 「会社の財務状況は良くないけど、経審で不利にならないか心配…」
そうお悩みの建設業者様は多いのではないでしょうか。
公共工事を受注するために欠かせない経営事項審査(経審) の中でも、完成工事高(X1) と並んで重要なのが、自己資本額及び利益額(X2) です。X2は、会社の財政状態や収益性を客観的に示す指標であり、経審の評点Pに影響します。
しかし、「自己資本」や「利益額」と聞いても、具体的に何をどうすれば点数に結びつくのか、判断に迷う経営者の方も少なくありません。
この記事では、建設業専門の行政書士が、経審における 自己資本額及び利益額(X2) の意味、計算方法、そして評点アップのための具体的な対策をわかりやすく解説します。この記事を読めば、自社の財務状況が経審にどう影響するかが明確になり、点数アップに向けた戦略が見えてくるはずです。
📜 目次
- 経審における自己資本額及び利益額(X2)とは?
- 💰 X2の基本|企業の安定性を測る指標
- 💡 なぜX2が経審で重要視されるのか
- 自己資本額(X2ア)の評価ポイント
- 📈 自己資本額とは?|貸借対照表のどこを見る?
- 📊 自己資本額が経審の評点に与える影響
- ✔️ 自己資本額を増やすための具体的な方法
- 利益額(X2イ)の評価ポイント
- 📊 利益額とは?|損益計算書から読み解く
- 📈 利益額が経審の評点に与える影響
- ⚠️ 営業利益の「安定性」が重要である理由
- 自己資本額と利益額の評価シミュレーション
- ⚙️ X2評点の計算式を理解する
- 📊 数値例でわかる!評価点への影響
- X2評点を向上させるための戦略
- ✅ 決算書の改善が評点アップの鍵
- 💼 行政書士との連携で最適な経審対策を
- まとめ|X2は会社の財務健全性を示す顔です
- 確認クイズ(3問)
経審における自己資本額及び利益額(X2)とは?
💰 X2の基本|企業の安定性を測る指標
自己資本額及び利益額(X2) は、経営事項審査(経審) の評価項目の一つであり、企業の財務健全性と収益性を評価するものです。
X2は、以下の2つの要素から構成されています。
- 自己資本額(X2ア)
- 利益額(X2イ)
自己資本額 は、会社の財産の源泉のうち、借入金などではない「返済不要の資本」を指します。会社の倒産リスクや外部からの信用力を測る重要な指標です。
一方、利益額 は、会社の事業活動から生み出された「儲け」を指します。経審では、単年度の利益だけでなく、継続的に利益を確保できる収益力が評価されます。
X2は、経審の5つの評価項目(X1, X2, Y, Z, W, )のうち、完成工事高(X1)経営状況(Y) と並んで決算報告書である財務諸表において算出していきます。

💡 なぜX2が経審で重要視されるのか
公共工事の発注者にとって、工事を安心して任せられる業者を選定することは非常に重要です。そのため、発注者は、単に施工実績(完成工事高X1)だけでなく、会社の財政基盤がしっかりしているか、継続的な事業運営ができる収益力があるか(自己資本額及び利益額X2)を重要と考えております。
財務基盤が脆弱な会社は、予期せぬトラブルや経済変動に弱く、工事の途中で資金繰りが悪化し、事業を継続できなくなるリスクがあります。このようなリスクを回避するため、経審ではX2の評価が非常に重要視されるのです。
自己資本額(X2ア)の評価ポイント
📈 自己資本額とは?|貸借対照表のどこを見る?
自己資本額(X2ア) は、貸借対照表の「純資産の部」の合計額から、特定の項目(自己株式など)を除いた金額です。
具体的には、資本金、資本剰余金、利益剰余金などの合計額が、自己資本額となります。
自己資本の厚みは、会社の信用力を測る上で非常に重要な指標です。自己資本が厚いほど、借入金などに頼らない経営ができていると判断され、銀行からの融資や取引先からの信用を得やすくなります。

📊 自己資本額が経審の評点に与える影響
経審では、自己資本額 が大きいほど高い評点が得られます。これは、資本金が厚いほど経営が安定していると評価されるためです。
例えば、自己資本比率(自己資本額÷総資産額)が高い会社は、財務基盤が盤石であると判断されます。経審の評価項目**Y(経営状況)**でも、この自己資本比率が評価されるため、X2アの向上はYの評価アップにもつながります。
✔️ 自己資本額を増やすための具体的な方法
自己資本額を増やすには、以下の方法が挙げられます。
- 増資 新たに株式を発行し、資本金を増やす方法です。最も直接的に自己資本を増やすことができますが、株主構成や手続きに注意が必要です。
- 利益の内部留保 事業で得た利益(利益剰余金)を、配当などで社外に流出させずに社内に蓄積していく方法です。継続的な事業活動を通じて、利益を積み重ねていくことが重要です。
- 増資(デット・エクイティ・スワップなど) 負債を資本に振り替えることで、自己資本を改善する方法です。専門的な手続きが必要となるため、行政書士や税理士と相談して進めることが不可欠です。
利益額(X2イ)の評価ポイント
📊 利益額とは?|損益計算書から読み解く
利益額(X2イ) は、損益計算書に記載されている営業利益と減価償却費の合計額から算出されます。
営業利益は、当期の営業活動で稼いだ利益です。減価償却費 は、会計上の費用ですが現金支払いを伴わないため会社財産をプラスに導きます。
経審では、単年度の利益だけでなく、2期分の平均額を算出します。これは利益の継続性・安定性が重視されるからです。一時的に多額の利益を計上しても、翌年に赤字に転落するようなケースがあるためです。

📈 利益額が経審の評点に与える影響
経審では、利益額 が高いほど、高い評点が得られます。また、利益を継続的に生み出す力がある会社は、事業計画が優れており、安定した経営ができると判断されるためです。
特に、営業利益の安定性は、経営状況を判断する上で非常に重要です。建設業では、景気や受注状況によって売上が変動しやすいため、営業利益を安定的かつ継続的に確保することが、経審で高い評価を得るためのポイントとなります。
⚠️ 営業利益の「安定性」が重要である理由
なぜ経常利益・特別利益よりも営業利益の安定性が重要なのでしょうか。
経常利益は、本業の儲けを示す営業利益と、財務活動や本業以外の活動による収益(受取利息など)を加減した利益です。
特別利益は、経常利益に不動産売却などの損益を加減したりえきです。
経審では、本業でどれだけ安定して利益を生み出しているかが評価されます。たとえば、不動産売却による一時的な特別利益だけが突出している場合、本業の収益性は低い場合もある可能性があります。安定した営業利益を確保することは、会社の事業計画が堅実であり、将来にわたって安定した経営ができる証明となるのです。
自己資本額と利益額の評価シミュレーション
⚙️ X2評点の計算式を理解する
自己資本額及び利益額(X2) の評点は、まず「自己資本額」と「平均利益額」それぞれを点数化し、その平均を算出します。
X2の評点 = (自己資本額の点数 + 平均利益額の点数) ÷ 2
この評価システムは、企業の財務健全性と収益性を総合的に判断するものです。それぞれの点数は、ご提示いただいたように、自己資本額と平均利益額の金額帯に応じて、それぞれ異なる換算式(換算表にて)が適用されます。
- 自己資本額の換算式(例)
- 自己資本額が1億円以上1.2億円未満の場合:
評点 = 13 × (自己資本額) ÷ 20,000 + 650
- 自己資本額が5億円以上6億円未満の場合:
評点 = 18 × (自己資本額) ÷ 100,000 + 759
- 自己資本額が1億円以上1.2億円未満の場合:
- 平均利益額の換算式(例)
- 平均利益額が1億円以上1.2億円未満の場合:
評点 = 15 × (平均利益額) ÷ 20,000 + 666
- 平均利益額が4,000万円以上5,000万円未満の場合:
評点 = 12 × (平均利益額) ÷ 10,000 + 634
- 平均利益額が1億円以上1.2億円未満の場合:
📈 数値例でわかる!評価点への影響
具体的な数値例を用いて、この複雑な計算プロセスをシミュレーションしてみましょう。
【条件】
- A社
- 自己資本額:1.5億円
- 平均利益額:5,000万円
- B社
- 自己資本額:2億円
- 平均利益額:1億円
A社の評点計算
- 自己資本額の点数
- 自己資本額1.5億円は「1.5億円以上~2億円未満」の範囲に含まれます。このため、以下の換算表式に当てはめ(X2ア)点数を計算いたします。
- (X2ア)
評点 = 23 × (自己資本額) ÷ 50,000 + 675 =
- 23 × (150,000千円) ÷ 50,000 + 675 = 744点
- 平均利益額の点数
- 平均利益額5,000万円は「5,000万円以上~6,000万円未満」の範囲に含まれます。このため、以下の換算表式に当てはめ(X2イ)点数を計算いたします。
- (X2イ)
評点 = 12 × (平均利益額) ÷ 10,000 + 634 =
- 12×(50,000千円)÷10,000+634⁼694点
- X2評点
X2 = (X2ア + X2イ) ÷ 2 =
- (744+694)÷2=719点
B社の評点計算
- 自己資本額の点数
- 自己資本額2億円は「2億円以上~2億5,000万円未満」の範囲に含まれます。このため、以下の換算表式に当てはめ(X2ア)点数を計算いたします。
- (X2ア)
評点 = 19 × (自己資本額) ÷ 50,000 + 691 =
- 19×(200,000千円)÷50,000+691=767点
- 平均利益額の点数
- 平均利益額1億円は「1億円以上~1億2,000万円未満」の範囲に含まれます。このため、以下の換算表式に当てはめ(X2イ)点数を計算いたします。
- (X2イ)
評点 = 15 × (平均利益額) ÷ 20,000 + 666 =
- 15×(100,000千円)÷20,000+666=741点
- X2評点
X2 = (X2ア + X2イ) ÷ 2
=- (767+741)÷2=754点
このように、自己資本額と平均利益額の両方をバランス良く向上させることが、X2の評点アップに繋がることがわかります。特に、金額帯の境界線付近にある場合は、少しの改善で大きく評点が伸びる可能性があるため、戦略的な対策が重要です。
X2評点を向上させるための戦略
✅ 決算書の改善が評点アップの鍵
X2の評点を向上させるためには、日々の事業活動で収益性を高めるとともに、決算書の内容を改善していくことが不可欠です。
- 経常利益の安定化 単発的な利益に頼らず、本業での安定的な収益確保を最優先します。
- 適切な利益留保 得られた利益を適切に内部留保し、自己資本を厚くします。
- 経費の見直し 無駄な経費を削減し、利益率を向上させます。
これらの改善は一朝一夕にできるものではありません。経審申請の直前だけでなく、計画的に取り組む必要があります。
💼 行政書士との連携で最適な経審対策を
自己資本額及び利益額(X2) をはじめとする経審の評価項目は、複雑な計算と専門的な知識が必要です。
- [関連記事] 経審の**完成工事高(X1)**についてはこちら
- 予定[関連記事] 経審の**経営状況(Y)**評価についてはこちら
- 予定[関連記事] 企業の自己資本比率を改善する3つの方法
当事務所では、建設業専門の行政書士として、お客様の財務状況を詳細に分析し、X2の評点向上に向けた具体的なアドバイスを行います。また、経審申請に必要な書類の作成や手続きをトータルでサポートすることで、お客様が本業に集中できる環境を整えます。
まとめ|X2は会社の財務健全性を示す顔です
この記事では、経審における 自己資本額及び利益額(X2) の重要性と、その評価の仕組みについて解説しました。
X2 は、会社の財務健全性と収益性を示す最も重要な指標です。この評点を上げることは、公共工事の入札に参加するための必須条件であるだけでなく、会社の信用力を高め、将来的な事業拡大の基盤を築くことにもつながります。
経審の申請でお困りの方、自社の財務状況が経審にどう影響するか知りたい方は、ぜひ一度ご相談ください。貴社の現状を丁寧にヒアリングし、最適な経審対策をご提案いたします。
確認クイズ(3問)
経審に役立つ財務の知識クイズ
経審の点数アップに不可欠な「自己資本額及び利益額(X2)」について、記事の内容から3つのクイズを出題します。あなたの知識を試してみましょう!
【第1問】
記事によると、経審で特に重要視される自己資本額及び利益額(X2)は、主に企業の何を評価する指標とされていますか?
- 企業の財務健全性と収益性
- 施工実績と技術力
- 従業員数と資格者数
【第2問】
記事によると、自己資本額が厚いほど、経審で高い評点が得られる理由として正しいのはどれですか?
- 資本金が厚いほど経営が安定していると評価されるため
- 工事実績が多く、技術力が高いと評価されるため
- 従業員の資格取得率が高いと評価されるため
【第3問】
記事によると、経審で「経常利益の安定性」が重要視されるのは、なぜですか?
- 会社の事業計画が堅実であり、安定した経営ができる証明となるため
- 一時的な特別利益を高く評価するため
- 借入金が少ないことを示すため