🏗️大阪府での完成工事高の振替え制度とは？一式工事への積み上げで入札ランクを上げる方法

建設業を営む皆さま、公共工事の入札に参加するうえで、経営事項審査（経審）の結果が公共工事の入札に大きな影響があるのは言うまでのありません。特に、経審の評価項目である完成工事高は、その会社の規模や実績を測る重要な指標であり、入札時の競争力を決めるP点に直結します。

「もっと上のランクの工事に挑戦したい」「P点を上げて競争力を高めたい」そうお考えではありませんか？

実は、経審には独自のルールとして、完成工事高を特定の業種に**「振り替える（積み上げる）」ことで、経審の評価を劇的に変えられる制度があります。これは、公共工事の入札で有利になるための、いわば"隠れた切り札"**です。

この記事では、建設業許可・経営事項審査に詳しい行政書士が、大阪府の「完成工事高の振替え」制度について、その仕組みから具体的な活用方法まで、わかりやすく解説します。

この記事を読めば、以下のことがわかります。

• 経審独自の完成工事高の振替え制度の基本
• どのような業種間で振替えができるのか
• 振替え制度を活用して、一式工事の入札ランクを上げる方法
• 制度を利用する際の注意点

大阪府での入札ランクアップ、一式工事のP点強化を目指す経営者や担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。

📖 もくじ

１　完成工事高の振替えとは？

• 経審における完成工事高の役割
• 大阪府経営事項審査の「振替え制度」の基本

２　大阪府で振替えできる組み合わせ

• 一式工事への振替え
• 専門工事への振替え

３　実際の事例（土木業者のケース）

• 振替え前：各専門工事に完成工事高が分散
• 振替え後：専門工事を土木一式へ積み上げ
• 振替えの効果

４　表解：振替え前と振替え後の比較

５　制度活用のポイントと注意点

• P点強化に直結する一式工事への振替え
• 専門工事のP点がゼロになるデメリット
• 専門工事同士の振替えも活用できる

６　まとめ

1. 完成工事高の振替えとは？

経審における完成工事高の役割

経営事項審査（経審）は、国や地方自治体から公共工事を受注するために必須の審査です。この審査では、会社の財務状況、技術力、社会性など様々な項目が評価され、その合計点（総合評定値P点）によって入札参加のランクが決定されます。

このP点を構成する要素の中で、**「完成工事高」**は会社の施工実績を示す重要な評価項目です。完成工事高が高いほど、会社の規模や実績が評価され、P点も高くなります。

しかし、複数の建設業許可を持っている会社では、完成工事高がそれぞれの専門工事業種に分散してしまうことがよくあります。

例えば、土木一式工事、舗装工事、水道施設工事の許可を持つ会社があったとします。各許可で実績を積んだとしても、それぞれの完成工事高が独立して評価されるため、個別の業種の評価は上がっても、最も入札機会の多い一式工事の評価が伸び悩むケースがあるのです。

大阪府経営事項審査の「振替え制度」の基本

大阪府経営事項審査では、特定の建設業許可間で完成工事高を合算できる「振替え」制度を設けています。

この制度は、国土交通省の通知に基づき全国的に実施されているものです。

完成工事高の振替えとは、ある業種の完成工事高を別の業種に「移し替えて」評価を受けることです。特に、複数の専門工事の完成工事高を、土木一式工事や建築一式工事といった一式工事に**「積み上げる」**ことが大きなメリットとなる場合があります。

これにより、分散していた実績を一式工事に集約し、一式工事のP点を大幅に引き上げることが可能になるからです。

2. 大阪府で振替えできる組み合わせ

大阪府で完成工事高を振り替えるには、いくつかの組み合わせとルールがあります。許可業種であれば、どんな組み合わせでも自由に振替えられるわけではありません。

一式工事への振替え

最も活用されるのが、専門工事を一式工事に振り替えるパターンです。これは、専門工事の実績を、より評価点が高く入札機会も多い一式工事に合算することで、土木一式や建築一式のP点を強化することを目的とします。

• 建築一式工事 ⇔ 建築系専門工事
  • 内装仕上工事、屋根工事、塗装工事、防水工事、熱絶縁工事、建具工事など、建築物の建設に関連する専門工事
• 土木一式工事 ⇔ 土木系専門工事
  • とび・土工・コンクリート工事、舗装工事、しゅんせつ工事、水道施設工事など、土木工作物の建設に関連する専門工事

【共通ルール】

• 振替え元と振替え先の両方の許可を持っている必要があります。
• 振替元の業種の完成工事高は全額、一式工事に**「積み上げ」**られます。
• 振替元の業種は、その事業年度の経営事項審査を受けることができません。

専門工事への振替え

一式工事への振替え以外に、専門工事間で完成工事高を振り替えることも可能です。 特に、以下の組み合わせはよく利用されます。

• 電気工事 ⇔ 電気通信工事、消防施設
  • 電気工事の完成工事高を電気通信工事に振り替えたり、逆に電気通信工事の完成工事高を電気工事に振り替えたりできます。
  • これは、電気工事と電気通信工事の業務内容が密接に関わっているため、工事内容に応じて柔軟に完成工事高を評価できるようにするためです。
  • この場合、専門工事の完成売上高については、年単位で完成工事高を積み上げることができます。例えば審査対象年度は積み上げるが、直前２年は積み上げないなどの選択が可能です。
• とび・土工・コンクリート工事 ⇔ 石工事、造園工事、解体工事
• 管工事 ⇔ 熱絶縁工事、水道施設工事、消防施設工事
• 塗装工事、屋根工事 ⇔ 防水工事

これらの振替えも、振替え元の業種はその事業年度の経審を受けることができなくなる点に注意が必要です。

3. 実際の事例（土木業者のケース）

ここでは、具体的な数値を使って、完成工事高の振替えがいかにP点に影響するかを見ていきましょう。

【登場人物】 土木業を営むA社

【保有許可】 土木一式工事、舗装工事、水道施設工事

【課題】 各専門工事では実績を積んでいるが、土木一式工事の実績が伸びず、入札参加資格のランクが上がらない。

振替え前：各専門工事に完成工事高が分散

A社の直前２年の平均完成工事高は以下の通りでした。

• 土木一式工事： 303,186千円
• 舗装工事： 88,525千円
• 水道施設工事： ０

各業種の実績は、それぞれのP点計算に反映されますが、最も競争力の鍵となる土木一式工事の完成工事高が低いため、入札に参加できる工事の規模が限定されていました。

振替え後：専門工事を土木一式へ積み上げ

A社は、経営戦略として「土木一式工事の入札ランクアップ」を最優先事項としました。そこで、舗装工事、水道施設工事の完成工事高を、すべて建築一式工事に振り替えることにしました。

その結果、直前3年の平均完成工事高は以下のようになりました。

• 土木一式工事： 303,186千円（元々の実績）＋ 88,525円（舗装）＝ 391,711千円
• 舗装工事： 0
• 水道施設工事： 0（今回の場合水道施設工事の売上高はありません。）

この振替えによって、土木一式工事の完成工事高は 303,186千円から 391,711千円へと大幅にアップしました。

振替えの効果の計算

【工事種別評点（X１）計算】

土木一式工事: 3億9,171万１千円⁼391,711千円

許可を受けた建設業に係る建設工事の種類別年間平均完成工事高は

３億円以上～４億円未満の評点計算式を使用します。Ｘ１＝　42 ×（年間平均完成工事高）÷ 100,000 ＋ 716

Ｘ１＝42×（391,711千円）÷100,000＋716＝880（評点に小数点以下の端数がある場合は切り捨てる）

【総合評定値（Ｐ点）計算】

計算式　　　　　　Ｘ１×0.25（25%）=Ｐ点

完成工事高振替前　843×0.25=210（評点に小数点以下の端数がある場合は切り捨てる）

完成工事高振替後　880×0.25=220（評点に小数点以下の端数がある場合は切り捨てる）

完成工事高が391,711千円となったことで、土木一式工事のＸ１点は880点、Ｐ点を210から220と差し引き10点アップ大幅に上昇し、入札参加資格のランクが各自治体に評価によりますが1つ上のランクに上がったり、ランクはそのままの場合でも評価がアップすることになるでしょう。

これにより、A社はこれまで参加できなかった規模の公共工事に入札できるようになったり、公共工事取得のチャンスが増すことにより、会社の売上と利益のさらなる拡大が見込めるようになるのではないでしょうか。

4. 表解：振替え前と振替え後の比較

この振替え制度の効果を、以下の表で視覚的に見てみましょう。

Google スプレッドシートにエクスポート

表はイメージです。左側から右側へ、複数の専門工事の実績が一式工事に積み上げられる様子を表しています。

この図が示すように、バラバラだった完成工事高を1つの業種に集約することで、評価の軸となる**「一式工事のP点」**を劇的に引き上げることが可能になります。

5. 制度活用のポイントと注意点

経審独自のこの制度は非常に強力な武器となりますが、活用する際にはいくつかのポイントと注意点があります。

P点強化に直結する一式工事への振替え

この制度の最大のメリットは、**「大阪府 経営事項審査 積み上げ」**によって、土木一式工事や建築一式工事のP点を高められることです。

入札参加資格審査では、それぞれの業種ごとに格付けがなされます。例えば、建築一式工事で上のランクの工事に参加したい場合、その業種のP点を高めることが最も効果的です。専門工事の実績を一式工事に集中させることで、その戦略的な目標を達成できます。

専門工事のP点がゼロになるデメリット

振替え制度を利用する際の最大の注意点は、振替え元の業種の完成工事高が「0」として評価されることです。

事例のA社の場合、舗装工事の完成工事高はすべて土木一式工事に振り替えられたため、これらの専門工事のP点は計算されず、結果的に経審の対象外となります。

もし、これらの専門工事での単独入札や、専門工事のP点も維持したい場合は、振替え制度の利用が適切かどうかを慎重に検討する必要があります。この対策には各自治体を分析しの入札においての対策になります。

専門工事同士の振替えも活用できる

「電気工事 ⇔ 電気通信工事」のように、専門工事同士で完成工事高を振り替えることも可能です。 これは、元請工事の性質がどちらの業種にも当てはまる場合に有効です。

例えば、ビル全体の電気設備工事を受注し、その中に通信設備工事も含まれている場合、その工事全体の完成工事高をどちらかの業種に一本化することで、その業種のP点を強化できます。

どの工事をどの業種に振り替えるかは、経審申請時に提出する書類に計算式を記載する必要があります。

6. まとめ

**「大阪府 完成工事高 振替え」**制度は、建設業者が公共工事の入札で有利になるための、非常に効果的な戦略です。

• 複数の専門工事業種の完成工事高を、土木一式工事や建築一式工事に集約することで、分散していた実績を一本化。
• これにより、一式工事のP点を大幅に引き上げ、入札参加資格のランク又は客観的評価点を向上させることが可能。
• ただし、振替え元の業種は経審の対象外となり、その完成工事高はゼロとなるため、戦略的な判断が不可欠。

この制度をうまく活用すれば、御社の入札競争力を高め、より規模の大きな公共工事を受注できる可能性が広がります。

一方で、「どの工事をどの業種に振り替えるべきか」「自社の経営戦略にとって最適な振替え方法は何か」といった判断は、専門的な知識が必要です。特に、振替えを行うと経審の結果が大きく変わるため、慎重な検討が欠かせません。

もし、この制度についてさらに詳しく知りたい、自社のケースで振替えが有効かどうか相談したい、という場合は、建設業許可や経営事項審査に詳しい行政書士にご相談ください。

専門家である行政書士が、御社の状況を丁寧にヒアリングし、最適な経審戦略を提案いたします。

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執筆者情報

執筆者：代表 　林 信武（はやし のぶたけ）

所属： NOBU行政書士事務所

プロフィール：

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また、ドローン飛行許可申請・法務相談も多数対応しており、

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日本商工会議所簿記1級を取得しており、法律と会計両方の視点から建設業者様の経営をサポート。

「わかりやすい」をモットーに、法律や会計の難しい内容を噛み砕いて解説させていただきます。