経営事項審査のW点計算を徹底解説!【自社の点数がわかる実例付き】

経審の「W点」ってどうやって計算するの?

「経営事項審査(経審)」は、公共工事を受注する建設業者にとって、避けては通れない重要な手続きです。しかし、経審の点数、特に**「W点」**と呼ばれる「社会性等」の評価項目は、複雑で難解に感じていませんか?

「W点が一体どうやって決まるのかわからない」 「自社の点数がなぜこの数値なのか知りたい」 「経審の点数を少しでも上げたいが、どこから手を付ければいいのかわからない」

もしあなたがそう感じているなら、ご安心ください。この記事では、専門行政書士の視点から、実際の「総合評定値通知書」に記載される項目に基づき、W点の計算過程を具体的に、かつわかりやすく解説します。

この記事を読めば、W点の算出ロジックが明確になり、自社の点数改善に向けた具体的な一歩を踏み出せるようになります。


目次

  1. 経審の「W点(社会性等)」とは?
  2. W点を構成する8つの要素(W1~W8)
  3. 【実例計算】あなたのW点を算出してみよう
  4. W点を改善するためのポイント
  5. まとめ

1. 経審の「W点(社会性等)」とは?

経審の総合評定値(P点)は、いくつかの要素から構成されています。その中でも**W点(社会性等)**は、企業の財務状況や工事実績といった「経営力」とは異なり、企業の社会的な取り組みやコンプライアンス遵守の姿勢を評価する項目です。

具体的には、以下の8つの要素(W1~W8)に細分化され、それぞれの取り組み状況に応じて加点・減点が行われます。

2. W点を構成する8つの要素(W1~W8)

W点は、以下の8つの評価項目で構成されています。

  • W1:建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況
    • 雇用保険、健康保険、厚生年金保険の加入状況
    • 退職金制度、法定外労働災害補償制度の導入状況
    • 若年技術職員の育成、CPD単位取得数など
  • W2:建設業の営業継続の状況
    • 営業年数
    • 民事再生法または会社更生法の適用の有無
  • W3:防災活動への貢献の状況
    • 防災協定の締結の有無
  • W4:法令遵守の状況
    • 建設業法に基づく営業停止・指示処分の有無
  • W5:建設業の経理の状況
    • 監査の受審状況
    • 公認会計士等の数
  • W6:研究開発の状況
    • 研究開発費の有無
  • W7:建設機械の保有状況
    • 指定された建設機械の保有状況
  • W8:国際標準化機構が定めた規格による登録の状況
    • ISO9001, ISO14001, エコアクション21等の認証取得状況

これらの各項目で加算された点数を合計し、減点項目を差し引いたものが、最終的なW点の合計となります。


3. 【実例計算】あなたのW点を算出してみよう

それでは、実際に皆さんのW点を計算してみましょう。 ご自身の**「総合評定値通知書」**を準備して、以下のステップに沿って数値を当てはめてみてください。

ステップ1:各W項目の点数を確認する

まず、通知書に記載されている各項目の点数を確認します。

項目評価内容点数(例)
W1建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況(例)○○点
W2建設業の営業継続の状況(例)○○点
W3防災活動への貢献の状況(例)○○点
W4法令遵守の状況(例)○○点
W5建設業の経理の状況(例)○○点
W6研究開発の状況(例)○○点
W7建設機械の保有状況(例)○○点
W8国際標準化機構が定めた規格による登録の状況(例)○○点

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ステップ2:W点の合計を算出する

各項目の点数が確認できたら、それらをすべて合計します。

W点の合計 = (W1の点数) + (W2の点数) + (W3の点数) + (W4の点数) + (W5の点数) + (W6の点数) + (W7の点数) + (W8の点数)

評点W = W点の合計 × 1750/200(係数)

例えば、通知書の点数が上記の総合評定値通知書だとしたら

  • W1:【45点】
  • W2:【22点】
  • W3:【0点】
  • W4:【0点】
  • W5:【0点】
  • W6:【0点】
  • W7:【12点】
  • W8:【0点】

この場合のW点の合計は…

W点の合計 = 45+ 22 + 0 + 0 + 0 + 0 + 12 +0 = 79点

評点W= W点の合計79 × 1750/200 =691 となります。(小数点以下端数切り捨て)

この評点W691点が、経審の総合評定値(P点)を算出するための重要な数値となります。

評点W691点を経審の総合評定値(P点)に換算すると691×15%=104(小数点以下四捨五入)となります。

上記の総合評定値通知書の評点Wは750点となっておりますがこれには理由があります。経営事項審査は改正が行われることがあります。直近では令和5年度に改正が行われており、令和5年8月14日以降を審査基準日とする申請において、P点に占めるW点のウェイトが大きく増加するため、各項目間のバランスを維持するべく、総合評定値算出に係る係数が、過去の1900/200から現在1750/200に変更されました。

過去の係数で算出してみましょう。

評点W= W点の合計79 × 1900/200 =750 となります。(小数点以下端数切り捨て)

この評点W750点が、経審の総合評定値(P点)を算出するための重要な数値となります。

評点W750点を経審の総合評定値(P点)に換算すると750×15%=113(小数点以下四捨五入)となります。

これは上記時の総合評定値通知書の数値となります。

これは何をあらわしているのでしょう?

建設業は社会性等のニーズに基づいて日々変化しております。新し項目がプラスの得点に加わったり、過去の評価荷重が減らされたりさまざまな改正が行われることにより進化しております。

よって、一度取得した項目の維持のみではP点を維持することはできないことをあらわしております。社会のニーズに合わせて日々進化をしていくことを期待されているのでしょう。

過去のままだと今回のP点はマイナス-9点現在では低くなります。

ステップ3:建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況W1の計算

(建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況 W1)
W1=ア+イ+ウ+エ+オ+カ

(保険などの加入の有無)(ア)(イ)

イの計算

雇用保険の加入      有 0点

健康保険の加入      有 0点

厚生年金保険の加入    有 0点

アの計算

建設業退職金共済制度の加入        有 15点

退職一時金制度・企業年金制度の導入    有 15点

法定外労働災害補償制度の加入       有 15点

(若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況)(ウ)

ウの計算

若年技術職員の継続的な育成及び確保   非該当  0点

新規若年技術職員の育成及び確保     非該当  0点

(知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況)(エ)

① 技術者1人当たりCPD単位は、CPD認定団体毎に以下数値を満点(30点)に換算。
(1人の技術者の単位取得数÷下表の数値×30=当該技術者のCPD単位 小数点以下切り捨て)

  技術者1人当たり上限を30単位とする。

② 技能者点 能力評価基準 レベルアップ 評価 ・審査基準日において、基準日前3年間における能力評価基準で1以上レベルアップした建設技能者の割合を計算し、表に当てはめて評点を求める。 ・基準日より3年前時点において既にレベル4と判定されている建設技能者については、建設技能者の数から除く。

③ 知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況


  ①②ので算出した点数を用い、以下の計算式から評点を求める

エの計算

総合評定値通知書より

CPD単位取得数   0単位

技術者数      6人

技能レベル向上者数 0人

技能者数      0人

控除対象者数    0人 

① CPD単位取得数÷技術者数            0単位  0点(技術者点)

② 技能レベル向上者数÷技能者数-控除対象者数   0人   0点(技能者点)

③ 知能及び技術又は技能の向上に関する取組の状況       0点(技術・技能向上点)

(ワーク・ライフ・バランスに関する取組の状況)(オ)

オの計算

女性活躍推進法に基づく認定の状況認定  非該当  0点

次世代法に基づく認定          非該当  0点

若者雇用促進法に基づく認定       非該当  0点

(建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況)(カ)

建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況(CCUS建設キャリアアップシステムの導入状況)

カの計算

カードリーダーの設置など   実施状況なし 0点

W1の計算

W1=ア+イ+ウ+エ+オ+カ=45+0+0+0+0+0=45

ステップ4:建設業の営業継続の状況 W2の計算

(建設業の営業継続の状況 W2)
W2=ア+イ

アの計算

営業年数 16年=22点

イの計算

民事再生法又は会社更生法の適用の有無  無=0点

W2の計算

W2=ア+イ=22+0=22点

ステップ5:防災活動への貢献の状況W3の計算

防災活動への貢献の状況 W3の計算

防災協定締結の有無  W3 無=0点

ステップ6:法令遵守の状況W4の計算

法令遵守の状況 W4の計算

指示処分を受けた場合  無=0点        

営業の全部又は一部の停止処分を受けた場合  無=0点

法令遵守の状況W4=0点

ステップ7:建設業の経理の状況W5の計算

アの計算

監査の受審状況  無=0点

イの計算

公認会計士等の数   0人

二級登録経理試験合格者の数  0人

公認会計士等数値=(公認会計士等の数×1)+(2級登録経理試験合格者の数×0.4)=0点

W5=ア+イ=0点

研究開発の状況 W6の計算

研究開発の状況 W6の計算

研究開発費の額を確認できる書類であって、金融商品取引法第24条第1項の規定による有価証券報告書を内閣
総理大臣に提出しなければならない会社については、有価証券報告書の写し(提出書類)(※会計監査人設置
会社のみ)2期平均により計算

研究開発費  0

W6=0点  

建設機械の保有状況 W7の計算

建設機械の保有状況 W7の計算

建設機械の所有及びリース台数   W7=9台=12点

国又は国際標準化機構が定めた規格による登録状況 W8の計算

(国又は国際標準化機構が定めた規格による登録状況 W8の計算

エコアクション21の認証の有無   無=0点

ISO第9001号の登録の有無   無=0点

ISO第14001号の登録の有無  無=0点

W8=0点

ステップ8:計算結果の解釈

算出されたW点の合計は、その企業が社会的な責任をどの程度果たしているかを示す指標となります。

  • 高い点数:社会保険の加入、退職金制度や法定外労働災害補償制度の導入、防災協定の締結など、社会貢献やコンプライアンスへの意識が高いと評価されます。
  • 低い点数:これらの取り組みが不足しているか、営業停止処分などの減点対象となる事由があったことを示しています。特に社会保険の未加入は、1項目で40点の減点となるため注意が必要です。

W点は、企業の「健全性」を示す評価項目であり、その点数が高いほど、発注者からの信頼も高まります。


4. W点を改善するためのポイント

W点の計算方法を理解すれば、点数を上げるための対策も明確になります。

  • W1(社会保険・福利厚生):社会保険への加入は必須です。加えて、退職金制度や法定外労働災害補償制度の導入を検討しましょう。
  • W2(営業年数):長年の営業実績は評価されます。堅実な事業運営を心がけましょう。
  • W3(防災協定):地元の自治体や建設業団体との防災協定を締結することで、点数に繋がります。
  • W5(経理の状況):経理責任者が「建設業経理士」の資格を取得するだけで加点になります。
  • W7(建設機械の保有):災害時などに活躍する建設機械の保有状況も評価対象です。

これらの項目は、財務状況の改善に比べて、比較的短期間で対策しやすいものも多くあります。

5. まとめ

経営事項審査のW点は、単なる点数ではなく、企業の社会的信用を測る重要な指標です。

この記事で解説した計算方法を使って、ぜひご自身のW点を算出してみてください。

もし計算方法や点数改善についてご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。

「点数を少しでも上げて公共工事の受注を増やしたい」「W点の計算方法がよくわからない」「自社の点数を改善したい」といったお悩みから、複雑な申請手続きまで、専門の行政書士がサポートいたします。まずはお気軽にご連絡ください。


[関連ページ]

「実務チェックリストで点数を上げる方法は経審W点の計算方法と点数アップ策」を参考にしてください。

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総合評定値通知書」P点の解説

執筆者情報

執筆者:代表  林 信武(はやし のぶたけ)

所属: NOBU行政書士事務所

プロフィール:

建設業許可・経営事項審査を専門にサポートしていきます。

また、ドローン飛行許可申請・法務相談も多数対応しており、

建設業とドローンの事業者様を支援しています。

日本商工会議所簿記1級を取得しており、法律と会計両方の視点から建設業者様の経営をサポート。

「わかりやすい」をモットーに、法律や会計の難しい内容を噛み砕いて解説させていただきます。