経営事項審査のキーポイント|完成工事高X1の評価を徹底解説!

「建設業許可は取ったけれど、次は公共工事に挑戦したい」「経審の点数が伸び悩んでいる」 そうお考えの建設業者様は多いのではないでしょうか。

公共工事を受注するためには、経営事項審査(経審) を受ける必要があります。そして、経審の評点に大きな影響を与える要素の一つが、完成工事高(X1) です。

「完成工事高は売上のことだろう」と単純に考えていると、思わぬ落とし穴にはまってしまうことも。経審における完成工事高には、独自の計算方法や評価基準があります。これらを正しく理解し、戦略的に積み上げていくことが、評点アップへの近道となります。

この記事では、建設業専門の行政書士が、経審における 完成工事高X1 の意味、計算方法、評価基準について、初心者の方にもわかりやすく徹底的に解説します。この記事を読めば、完成工事高X1の重要性が理解でき、自社の評点アップに向けた具体的な対策が見えてくるはずです。


📜 目次


経審における完成工事高(X1)とは?

🏗️ 完成工事高(X1)の基本

完成工事高(X1) とは、経営事項審査(経審) の評価項目の一つで、簡単に言えば「工事の売上高」を指します。経審では、この完成工事高の規模によって、企業の施工能力や経営規模を評価します。

建設業の売上高は、一般的に「完成工事高」と「兼業事業売上高」に区分されます。このうち、経審で評価の対象となるのは、建設工事に関する完成工事高のみです。

経審の評点は、大まかに以下の5つの項目から算出されます。

  1. X1:完成工事高
  2. X2:自己資本額・利益額
  3. Y:経営状況
  4. Z:技術力(技術職員数)
  5. W:社会性等

この中で、X1である 完成工事高 は、企業の事業規模を最も直接的に示す指標であり、経審の評点(P点)全体の25%に大きな影響を与えます。

💡 なぜ完成工事高(X1)が重要なのか

完成工事高が経審で重要視される理由は、以下の2点です。

  • 企業の施工能力を客観的に示す指標だから 完成工事高は、企業が過去にどれだけの規模の工事を完了させたかを示すものです。売上規模が大きいほど、多くの工事を手がけ、その分高い施工能力があると評価されます。
  • 公共工事の入札参加資格に直接影響するから 公共工事の入札では、発注者側が企業の施工能力を判断するために経審の評点P点を参考にします。特に大規模な工事では、高い評点P点が求められるため、完成工事高をいかに高めるかが、入札参加の重要な鍵となります。

完成工事高(X1)の計算方法と評価基準

📊 経審で評価される完成工事高の範囲

経審で評価される完成工事高は、建設業法の規定により、以下のいずれかを選択して申請することになります。

  • 直前2事業年度の平均
  • 直前3事業年度の平均

直前1年間のみの完成工事高を評価対象とすることはできません。経審は、一時的な売上の変動に左右されず、より安定した経営規模を評価する仕組みになっています。この 2年平均 または 3年平均 の選択は、後の章で詳しく解説しますが、企業の売上推移によってどちらが有利になるか戦略的に判断する必要があります。

📈 完成工事高の算定方法

経審における完成工事高は、建設業会計の原則 に基づいて算出します。具体的には、以下の3つの分類に分かれます。

  1. 元請完成工事高
  2. 下請完成工事高
  3. 附帯工事完成工事高

これらの合計額が、経審で評価される 総完成工事高 となります。

✅ 元請・下請工事の区分と集計の注意点

完成工事高の集計において、最も重要なのは 元請工事と下請工事の区分 です。経審では、元請完成工事高を、 Z(技術力) の評価項目が付加される割合があります。

  • 元請完成工事高:発注者から直接請け負った工事
  • 下請完成工事高:元請業者から請け負った工事

【注意点】

  • 共同企業体(JV):JVの工事は、自社の出資比率に応じて完成工事高に算入します。
  • 消費税:完成工事高は、税抜き で計上します。
  • 工事実績の証明:完成工事高を証明するためには、工事請負契約書や注文書、発注証明書などが必要になります。これらの書類は、経審申請時に提出を求められるため、日頃から正確に管理しておくことが不可欠です。

完成工事高(X1)の評価点算定プロセス

⚙️ 完成工事高の評点(P)算定式

完成工事高(X1)の評点算定は、単一の計算式ではなく、許可を受けた建設業に係る建設工事の種類別年間平均完成工事高の金額帯に応じて、それぞれ異なる換算式が適用される複雑な仕組みになっています。これは、売上規模が小さい企業から大規模な企業まで、公平に評価を行うためのものです。

以下に、金額帯ごとの換算式の一部を例として示します。

  • 年間平均完成工事高が3億円以上4億円未満の場合 X1の評点 = 42 × (年間平均完成工事高) ÷ 100,000 + 716
  • 年間平均完成工事高が1億円以上1.2億円未満の場合 X1の評点 = 19 × (年間平均完成工事高) ÷ 20,000 + 616

このように、金額帯が上がるにつれて換算式も変わり、より高い評点が算出される仕組みです。

📈 完成工事高X1の得点シミュレーション

ここでは、上記の換算式を用いて、具体的な計算例を挙げます。

【条件】

  • 年間平均完成工事高:3億5千万円
  • 適用する換算式:42 × (年間平均完成工事高) ÷ 100,000 + 716

ステップ1:年間平均完成工事高を千円単位に換算 3億5千万円 = 350,000千円

ステップ2:換算式に当てはめて計算 X1の評点 = 42 × (350,000千円) ÷ 100,000 + 716 X1の評点 = 42 × 3.5 + 716 X1の評点 = 147 + 716 = 863点

この結果から、年間平均完成工事高3.5億円の場合、X1の評価点は863点となります。(注:小数点以下の端数は切り捨て)

この複雑な計算プロセスは、売上規模の増加がそのまま評点アップに直結することを示しています。自社の年間平均完成工事高がどの金額帯に位置するかを把握し、そこからどの程度の評点が見込めるかを事前にシミュレーションすることが、経審対策の第一歩となります。


【実践編】2年平均と3年平均、どちらが有利?

経審では、完成工事高を 直前2年平均または3年平均 のいずれかで申請できます。この選択は、企業の売上推移によって、最終的な評点を大きく左右する重要なポイントです。

🔄 2年平均と3年平均の選択基準

基本的に、以下の考え方で選択すると有利な評点を獲得できます。

  • 【売上が右肩上がりの場合】 直近の売上が特に高い場合は、2年平均 を選択することで、過去の低い売上が評価を下げることを防ぎ、有利になる可能性があります。
  • 【過去に大規模な工事を計上した場合】 2年前や3年前に大規模な工事を受注し、売上が急増したような場合は、その急増した年度を平均に含めることで、3年平均 が有利になります。特に、直近2年間の売上が減少傾向にある場合は、3年平均を選択するメリットが大きいです。

📊 選択シミュレーションと具体例

以下に、数値例を挙げて具体的なシミュレーションをしてみましょう。

【会社C社の完成工事高推移】

  • 3年前:2億円
  • 2年前:3億円
  • 1年前(直前事業年度):5億円

1. 2年平均で申請した場合 年間平均完成工事高:(3億円+5億円)÷2=4億円

2. 3年平均で申請した場合 年間平均完成工事高:(2億円+3億円+5億円)÷3=約3.33億円

この例では、売上が右肩上がりのため、2年平均 の方が計算対象となる年間平均完成工事高が大きくなります。

次に、別のケースを考えてみましょう。

【会社D社の完成工事高推移】

  • 3年前:10億円
  • 2年前:3億円
  • 1年前(直前事業年度):4億円

1. 2年平均で申請した場合 年間平均完成工事高:(3億円+4億円)÷2=3.5億円

2. 3年平均で申請した場合 年間平均完成工事高:(10億円+3億円+4億円)÷3=約5.67億円

この例では、3年前の売上が突出しているため、3年平均 が最も有利であることがわかります。

このように、どの年度の売上を含めて平均化するかが、経審の評点を大きく左右します。申請前には、必ず売上推移を確認し、シミュレーションを行うことが非常に重要です。

完成工事高X1を最大化するための戦略

👆完成工事高の振替・算入により(X1)をあげる

完成工事高の振替参入とは、建設業の経営事項審査(経審)では、特定の条件下で、ある建設業種の完成工事高を別の建設業種の完成工事高に含める(振り替える)ことができます。これにより、経審の対象となる業種の完成工事高を増やせる可能性があります。

完成工事高の振替には、以下の3つのパターンがあります。

1.一式工事業への専門工事の振替(算入)

2. 専門工事への他の専門工事の振替(算入)

3. 分割分類による他の工事業への振替(算入)

この3つの振替を利用することにより得意とする工事種類の完成工事高(x1)を上げることができます。

✍️ 正しい帳簿作成と工事実績の管理

完成工事高を正確に計上するためには、日頃からの帳簿作成と工事実績の管理が不可欠です。以下のポイントを徹底しましょう。

  • 工事台帳の整備 工事台帳には、工事名、請負金額、完成引渡日、完成工事高計上日などを正確に記載します。
  • 税務申告との整合性 経審申請時の完成工事高は、税務署に提出した確定申告書の金額と一致させる必要があります。
  • 工事請負契約書の保管 元請・下請を問わず、すべての工事について契約書や注文書をきちんと保管します。

⚠️ 経審申請前の確認ポイント

  • 完成工事高が正確に計上されているか 会計帳簿上の完成工事高と経審申請書類の金額に相違がないか、最終チェックを行います。
  • 附帯工事の区分 水道工事や電気工事などの附帯工事も、建設工事の売上として計上できる場合があります。専門家と相談して、漏れなく計上しましょう。

まとめ|完成工事高X1は経審の基盤です

この記事では、経営事項審査 における 完成工事高X1 の重要性、計算方法、そして評点アップのための戦略について解説しました。

完成工事高X1 は、企業の施工能力を客観的に示す重要な指標であり、経審の評点に大きな影響を与える要素です。売上の推移に合わせて、2年平均や3年平均 を選択することで、より高い評点を獲得できる可能性があります。

経審の評点P点を上げるためには、完成工事高X1 だけでなく、自己資本額及び利益額(X2)経営状況(Y)技術力等(Z)社会性等(W)など、多岐にわたる項目を戦略的に改善していく必要があります。

当事務所では、建設業許可申請から経審対策、入札参加資格申請まで、建設業者様の事業をトータルでサポートしています。

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確認クイズ(3問)

経審の点数アップ戦略クイズ

記事の内容を振り返りながら、経審の点数アップに役立つ知識を試してみましょう!
3問のクイズに挑戦して、知識を定着させましょう。

【第1問】
記事によると、経審において、元請完成工事高と下請完成工事高のうち、Z(技術力)の評価項目で付加される割合があるとされているのはどちらですか?

  • 元請完成工事高
  • 下請完成工事高
  • どちらでも同じ

【第2問】
会社の売上が右肩上がりの場合、経審で完成工事高の評点を有利にするには、どの期間の平均を選択すべきだと解説されていますか?

  • 直前2事業年度の平均
  • 直前3事業年度の平均
  • どちらでも同じ

【第3問】
記事によると、経審で完成工事高を計上する際、消費税はどのように扱うべきだと解説されていますか?

  • 消費税込みで計上する
  • 消費税抜きで計上する
  • 消費税は任意で含めてもよい

全問終了です!お疲れ様でした!

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