経営事項審査の必要書類とは?大阪府で申請に必須の書類一覧と準備のポイント

「経審を受けたいけれど、必要書類が多すぎて何から手をつけていいか分からない」「どの順番で準備すればスムーズに手続きを進められるの?」
そうお悩みの建設会社経営者の皆様、ご安心ください。
公共工事の入札に参加するために必須となる「経営事項審査(以下、経審)」は、確かに多くの書類が必要で、初めて申請する方にとってはとても複雑に感じるかもしれません。しかし、必要書類の全体像を把握し、計画的に準備を進めることで、その負担を大きく減らすことができます。
この記事では、経審の専門家である行政書士が、**大阪府の公式な「経営事項審査の手引き」**を参考に、経審の必要書類の全貌を徹底的に解説します。この記事を最後まで読んでいただければ、「どの書類がなぜ必要なのか」を理解し、自社でスムーズに書類を準備するための具体的なヒントが得られるはずです。
目次
- 1. 経審申請に必要な書類とは? 🤝
- 2. 大阪府「経営事項審査の手引き」に基づく必要書類一覧 📋
- 3. よくあるつまずきポイントと注意点 ⚠️
- 4. 書類準備をスムーズに進めるコツ 💡
- 5. まとめ 📝
- 6.確認クイズ(3問)
1. 経審申請に必要な書類とは?🤝
書類が多い理由と重要性
経審は、例えるなら建設会社の「健康診断」のようなものです。
ただ単に「工事ができます」というだけでなく、経営規模、財務状況、技術力、社会性など、企業の総合的な実力を客観的に数値化するために行われます。この総合的な評価を行うため、申請には会社の様々な側面を証明する書類が多岐にわたって求められるのです。
経審の申請書類には、主に以下の3つの役割があります。
- 評価項目を証明する書類: 財務諸表や工事実績、技術者の資格証など、P点(総合評定値)を算出するための根拠となる書類です。
- 申請内容の正確性を確認する書類: 経営状況分析結果通知書や社会保険の加入証明書など、提出した申請内容が正しいことを公的に証明する書類です。
- 会社の基本情報を確認する書類: 建設業許可通知書や決算変更届など、会社の情報が最新であることを示す書類です。
これらの書類に一つでも不備があると、審査がストップしてしまい、せっかくの入札のチャンスを逃してしまうことにもなりかねません。経審を成功させるためには、書類の正確な理解と完璧な準備が何よりも重要です。
2. 大阪府「経営事項審査の手引き」に基づく必要書類一覧📋
ここからは、大阪府の手引き(第3章)で定められている提出書類を、申請内容別に分かりやすく分類して解説します。
会社の基本情報に関する書類
これらの書類は、申請者が経審を受ける資格があるか、会社の情報が正確であるかを確認するために必要なものです。
- 経営規模等評価申請書・総合評定値請求書
- 府様式第1号、規則様式第25号の14: 経審の申請そのものを行うための基本となる様式です。表紙と本体のセットで提出します。
- 委任状
- 原本: 申請者(会社の役員や従業員)以外の方が代理で申請手続きを行う場合に必要となります。
- 建設業許可通知書または許可証明書の写し
- 審査日現在で有効なもの: 申請者が建設業の許可を持っていることを証明します。
- 建設業許可申請書副本一式
- 直近のもの: 申請時の内容(役員や技術者、営業所など)を確認するために必要です。
- 決算変更届副本一式
- 審査対象事業年度分: 毎事業年度終了後に提出する書類で、会社の財務状況や工事実績などが記載されています。経審の基礎となる重要な書類です。
- 変更届副本一式
- 直近の許可申請以降に提出したもの: 許可申請後、役員や営業所などに変更があった場合に提出する書類で、最新の会社情報を確認します。
財務内容に関する書類
経審の「経営状況(Y点)」や「経営規模(X点)」を評価するために必須となる書類です。
- 経営状況分析結果通知書(原本)
- 規則様式第25号の13: Y点(財務分析)の評価は、大阪府ではなく国の登録を受けた「登録経営状況分析機関」に依頼して行います。この機関から発行される通知書の原本を提出します。
- 法人税確定申告書・決算報告書(写し)
- 審査対象事業年度分: 会社の売上高や利益、自己資本額などを証明します。X点やY点の算出に不可欠な書類です。
- 消費税及び地方消費税確定申告書控・納税証明書(写し)
- 審査対象事業年度分: 完成工事高を正確に把握するために必要です。
- 監査の受審状況を確認できる書類
- 該当する場合: 会計監査人や会計参与を設置している会社、または経理処理の適正を確認した旨の書類を提出することで、経審の「W点(社会性等)」で加点されます。
技術者や工事実績に関する書類
経審の「技術力(Z点)」と「経営規模(X点)」を証明するために重要な書類です。
- 工事種類別完成工事高・元請完成工事高(規則様式第25号の14別紙1)
- 規則様式第25号の14別紙1: 会社の完成工事高と、元請けとしての完成工事高を業種別に記載する書類です。
- 工事経歴書(規則様式第2号)
- 審査対象事業年度分: 事業年度中に完成したすべての工事を記載します。上位3件については、後述する契約書などの添付も求められます。
- 技術職員名簿(規則様式第25号の14別紙2)
- 審査日現在: 会社に所属する技術職員(専任技術者、監理技術者など)の情報を記載します。
- 国家資格等を確認する書類(写し)
- 技術職員名簿に記載した職員全員分: 建築士、施工管理技士、電気工事士など、技術者の資格を証明する書類です。
- 恒常的雇用関係・常時雇用を確認できる書類(写し)
- 審査基準日以前6か月を超えるもの: 会社の健康保険証、住民税特別徴収税額通知書など、技術職員が会社の正規の従業員であることを証明する書類です。
その他の確認書類(社会性等)
経審の「W点(社会性等)」を評価するために必要な書類です。
- その他の審査項目(社会性等)(規則様式第25号の14別紙3)
- 規則様式第25号の14別紙3: 労働環境への配慮や地域への貢献状況などを記載します。
- 社会保険の加入確認書類(写し)
- 審査基準日現在: 雇用保険、健康保険、厚生年金保険への加入が確認できる書類です。W点に大きく影響するため、必須の書類です。
- 建退共加入・履行証明書(写し)
- 審査基準日現在: 建設業退職金共済制度(建退共)に加入していることを証明する書類です。
- 建設機械の保有状況一覧表・証明書類(写し)
- 該当する場合: 自社で保有する建設機械を計上する場合、その保有を証明する契約書や写真などが必要です。
※この他、CPD単位や技能者名簿など、加点項目に応じて様々な書類が必要となります。詳細は大阪府の公式手引きをご確認ください。
3. よくあるつまずきポイントと注意点⚠️
書類準備で多くの建設会社が直面する「つまずきポイント」を3つご紹介します。
決算書類の作成・提出の注意点
経審の手続きは、毎事業年度終了後に作成する「決算変更届」がすべての始まりとなります。この届出が完了していないと、経審の予約も受付もできません。
- 提出期限の確認: 決算変更届は、事業年度終了後4か月以内に提出することが法律で定められています。経審の手続きを円滑に進めるためにも、決算確定後はできるだけ早くこの届出を済ませておきましょう。
- 副本の保管: 決算変更届は正本・副本の2部作成し、受付印を押印してもらった副本は必ず大切に保管しておきましょう。経審の際に提示を求められる重要な書類です。
技術職員名簿の整備
技術職員名簿に記載する技術者の「常勤性」を証明する書類は、特に不備が起こりやすいポイントです。
- 常勤性の証明: 技術職員が会社に審査基準日以前6か月を超えて在籍していることを、公的な書類で証明する必要があります。最も一般的なのが健康保険被保険者証の写しや住民税特別徴収税額通知書です。
- マイナンバーのマスキング: 健康保険証の写しを提出する際は、マイナンバーや記号・番号、QRコードなどは必ず黒く塗りつぶす(マスキングする)必要があります。これらが記載されたまま提出すると、個人情報保護の観点から受付されない場合がありますので注意が必要です。
- 役員と技術者の証明: 法人の役員や個人事業主を技術職員として計上する場合は、役員報酬額がわかる書類や確定申告書など、その立場に応じた証明書類が求められます。
写真や証明書の不備
些細なことと思いがちですが、書類の不備で最も多いのが、写真や証明書に関するものです。
- 写真の鮮明さ: 建設機械の写真などは、全体が鮮明に写っている必要があります。写真が不鮮明だと、その機械が本当に存在するか確認できず、評価の対象外となることがあります。
- 証明書の有効期限: 各種証明書には有効期限がある場合があります。特に、監査証明書やISO認証書などは、審査基準日時点で有効なものであるか、事前に確認しておきましょう。
- 書類の整理: 提出する書類は正本・副本の2部を作成し、大阪府の手引きにある順番通りに綴じます。また、技術職員の証明書類や工事経歴書の添付書類には、それぞれ該当する番号を通しで記載するなど、審査担当者が確認しやすいように工夫することが大切です。
4. 書類準備をスムーズに進めるコツ💡
膨大な書類を前に「どこから手をつければいいの?」と感じるかもしれません。しかし、いくつかのコツを押さえれば、書類準備の負担は大きく軽減できます。
早めに準備しておくべき書類
すべての書類を一度に揃えるのは大変です。まずは、準備に時間がかかる以下の書類から取り掛かることをお勧めします。
- 決算確定後すぐに「決算変更届」を提出する
- 経審の第一歩です。これがないと何も始まりません。
- 経営状況分析(Y点)の申請を済ませる
- Y点の通知書が手元にないと、経審の申請はできません。分析には数日〜1週間程度かかるため、早めに依頼しておきましょう。
- 技術者、社会保険の「常勤性」証明書類を揃える
- 健康保険証や住民税通知書など、技術職員全員分の書類を事前に集めておきましょう。
行政書士に依頼するメリット
書類準備は自社でも可能ですが、専門家である行政書士に依頼することで、よりスムーズに、そして確実に手続きを完了させることができます。
- 不備をなくし、確実な申請が可能
- 行政書士は経審の専門知識と豊富な経験を持っているため、書類の記載内容や添付書類のチェックを完璧に行うことができます。不備による差し戻しを防ぎ、無駄な時間を削減できます。
- P点アップに向けた専門的なアドバイス
- 書類作成だけでなく、「どうすればP点が上がるのか」という経営戦略的な視点でのアドバイスも提供できます。特に、技術力(Z点)や社会性(W点)の加点ポイントを的確にアドバイスします。
- 本業に集中できる
- 煩雑で専門的な書類準備を専門家に任せることで、経営者の皆様は、本来注力すべき営業活動や現場管理といった本業に集中することができます。
5. まとめ📝
経営事項審査の申請は、多くの必要書類と複雑な手続きが伴いますが、その全体像を理解し、計画的に準備を進めることが成功への鍵となります。
特に、大阪府での申請には、公式の手引きに定められた書類を漏れなく揃えることが不可欠です。この記事が、書類準備に悩む皆様の一助となれば幸いです。
もし、ご自身での書類準備に不安を感じる、P点アップのための戦略を知りたいといったお悩みがあれば、経審を専門とする行政書士にご相談ください。私たちは、皆様の公共工事への挑戦を力強くサポートします。
6. 確認クイズ(3問)
経営事項審査の書類準備クイズ
経審の必要書類はとても複雑です。
記事の内容を振り返りながら、3問のクイズに挑戦してみましょう!
【第1問】
経審における**「総合評点(P点)」**について、記事の内容と照らし合わせて正しい説明はどれでしょう?
- P点は、Y点とW点の2項目のみで計算される。
- P点は、企業の経営規模・財務状況・技術力・社会性等を総合的に評価した点数である。
- P点が低いほど、入札参加のチャンスが増える。
【第2問】
経審の「経営状況(Y点)」を評価するために提出が必須となる書類は、次のうちどれでしょう?
- 決算変更届副本
- 建設業許可通知書
- 経営状況分析結果通知書(原本)
【第3問】
経審の手続きを専門家である行政書士に依頼することで得られる、記事で紹介されたメリットとして最も適切なものはどれでしょう?
- 審査項目が減り、手続きが簡素化される
- P点アップに向けた専門的なアドバイスを受けられる
- 審査に必要な書類の提出が不要になる