経審の重要項目「完成工事高(X1)」はこう計算する! 実例で学ぶ算出の仕組み

経営事項審査(以下、経審)において、企業の技術力や施工実績を客観的に評価する項目の一つが、**完成工事高(X1)**です。この項目は、会社の規模や実績を示す重要な指標であり、総合評定値(P点)に大きな影響を与えます。

本記事では、お手元にある経営事項審査において「経営規模等評価結果通知書・ 総合評定値 通知書」に記載された数値を例に、完成工事高評点X1の計算手順をわかりやすく解説します。ご自身の通知書と照らし合わせながら読み進めていただければ、X1の計算ロジックを深く理解できます。

記事目次

  1. 経審の完成工事高(X1)の概要 📜
  2. 通知書に記載されるX1の位置と意味 🔍
  3. X1の計算式と適用ルール(2年平均・3年平均の比較を含む) 📊
  4. 実例:通知書の数値を使ったX1算出手順 📝
  5. X1の点数化プロセス
  6. 実務上の活用ポイント(戦略的な視点) 💡
  7. まとめ

経審の完成工事高(X1)の概要


経審における**完成工事高(X1)**とは、審査の対象となる決算期間内に完成した工事の請負代金の総額を指します。建設会社の売上高に相当する部分であり、経審の項目の中でも最も点数が変動しやすく、会社の成長を直接的に反映する指標です。

過去の記事「[完成工事高(X1)の基礎解説]」でも触れましたが、X1は会社の規模を評価する**「経営状況評点(Y)」**の構成要素でもあり、ここでの点数が高ければ高いほど、総合評定値P点もアップします。


📜通知書に記載されるX1の位置と意味


「経営規模等評価結果通知書・ 総合評定値 通知書」には、評価項目ごとの点数が記載されています。**完成工事高(X1)は、通知書の「完成工事高の評点(X1)」**の欄に記載されています。

お手元の通知書をご覧ください。**「完成工事高 評点(X1)」**という項目があり、その左側に各工事種類ごとの金額が並んでいます。この数値こそが、皆様の会社の工事実績として国に評価された金額です。

今回の例では、以下2年平均の金額が記載されています。

  • 土木一式工事: 3億318万6千円⁼303,186
  • 舗装工事: 8,852万5千円⁼88,525
  • 水道施設工事: 0円⁼0
  • 合計:3億9,171万1千円⁼391,711

これらの金額の合計が、経審で評価される完成工事高の総額となります。


📐X1の計算式と適用ルール


**完成工事高(X1)**の計算には、2つのパターンがあります。

  • 2年平均
  • 3年平均

どちらが採用されるかは、審査対象期間の決算年数によって決まります。通常、経審では原則として2年平均が採用されますが、2期以上審査を受けている場合は、申請者が選択することも可能です。

より高い点数が出る方を採用できるため、例えば「前期は売上が低かったが、今期は大きく伸びた」といったケースでは、2年平均の方が有利になる場合があります。反対に、「直近の期は工事が少なかったが、その前の期は好調だった」という場合は、3年平均を選択した方が点数が高くなることもあります。

今回の例では、「完成工事高は2年平均が採用されている」ので、2年平均にて計算を進めていきます。


✍実例:通知書の数値を使ったX1算出手順


では、実際に通知書の数値を当てはめて算出してみましょう。

【計算の前提】

  • 土木一式工事: 3億3,18万6千円⁼303,186
  • 舗装工事: 8,852万5千円88,525
  • 水道施設工事: 0円⁼0
  • 完成工事高は2年平均が採用されている

【X1 工事種別年間平均完成工事高計算式】

X1の値については、申請する業種の直前2年又は3年の年間平均完成高を次の表に当てはめ算出していきます。

【工事種別評点(X1)計算】

土木一式工事: 3億3,18万6千円⁼303,186

許可を受けた建設業に係る建設工事の種類別年間平均完成工事高は

3億円以上~4億円未満の評点計算式を使用します。X1= 42 ×(年間平均完成工事高)÷ 100,000 + 716

X1=42×(303,186)÷100,000+716=843(評点に小数点以下の端数がある場合は切り捨てる)

舗装工事: 8,852万5千円88,525

許可を受けた建設業に係る建設工事の種類別年間平均完成工事高は

8,000万円以上~1億円未満の評点計算式を使用します。X1= 22 ×(年間平均完成工事高)÷ 20,000 + 601

X1=22 ×(88,525)÷20,000+601=698(評点に小数点以下の端数がある場合は切り捨てる)

水道施設工事: 0円⁼0

許可を受けた建設業に係る建設工事の種類別年間平均完成工事高は

0~1,000万円未満の評点計算式を使用します。X1= 131 ×(年間平均完成工事高)÷ 10,000 + 397

X1=22 ×(  )÷20,000+397=397(評点に小数点以下の端数がある場合は切り捨てる)


📈X1の点数化プロセス


算出した各工事種類別2年平均完成工事高の金額は「完成工事高評点(X1)という評点に変換されます。この点数が高ければ高いほど、経審の総合評定値(P点)も高くなります。

点数化の計算式は以下の通りです。

3億円以上~4億円未満 X1= 42 ×(年間平均完成工事高)÷ 100,000 + 716

8,000万円以上~1億円未満 X1= 22 ×(年間平均完成工事高)÷ 20,000 + 601

0~1,000万円未満 X1= 131 ×(年間平均完成工事高)÷ 10,000 + 397

完成工事高評点X1=係数×(年間平均完成工事高)+補正項目

この式を見ると少し複雑に感じるかもしれませんが、要は完成工事高の金額が大きくなればなるほど、点数も二次関数のグラフのように緩やかに上がっていくという仕組みです。

このように、経審 完成工事高 計算式によって、皆様の会社の工事実績が点数に換算され、それが総合評定値に反映されるのです。


🎯実務上の活用ポイント(戦略的な視点)


**「経審 通知書 X1」**の数値を理解することは、単に点数を確認するだけでなく、会社の経営戦略を立てる上でも非常に重要です。

  • 工事実績の可視化: どの工事種類でどれだけの売上があるかを把握できます。今後の受注戦略や得意分野の強化に役立ちます。
  • 2年平均・3年平均の選択: 経審の申請時には、どちらの平均値で申請するかを選択できます。どちらが点数アップにつながるかを事前にシミュレーションすることで、経営事項審査 X1 計算を有利に進めることができます。
  • 建設業の経営事項審査(経審)では、特定の条件下で、ある建設業種の完成工事高を別の建設業種の完成工事高に含める(振り替える)ことができます。これにより、経審の対象となる得意とする業種の完成工事高を増やせる可能性があります。
  • 財務管理の最適化: X1を上げるためには、適切な時期に売上を計上することが重要です。経審の決算期を意識した財務管理を行うことで、点数アップを狙えます。

まとめ


本記事では、お手元の「経営事項審査 総合評定値 結果通知書」に記載された数値を使い、完成工事高(X1)の計算手順を具体的に解説しました。

  • X1は、通知書の「完成工事高・評点(X1)」欄に記載されています。
  • 各工事種類の2年平均又は3年平均完成工事高金額を計算式に当てはます。
  • 算出された金額は、独自の計算式で点数化され、総合評定値に反映されます。

ご自身の通知書と照らし合わせながら、X1の計算ロジックを理解できたでしょうか?

**「経審 完成工事高」**は、会社の成長を示す重要な指標です。この計算手順を理解することで、経審の点数アップに向けた具体的な戦略を立てることができます。

経審に関するご相談や、X1の計算シミュレーションについて詳しく知りたい方は、お気軽にご連絡ください。建設業の皆様の事業成長を、専門家として全力でサポートさせていただきます。