経営事項審査の点数を徹底解説!計算方法から評価アップの秘訣まで


この記事を読んでわかること

この記事は、建設業を営む経営者や担当者向けに、経営事項審査(経審)の複雑な点数の仕組みをわかりやすく解説します。

この記事を読むことで、以下のことがわかります。

  • 経営事項審査の点数がなぜ公共工事の入札に不可欠なのか。
  • 自社の点数がどのように計算されるのか、すべての評価項目を網羅して解説します。
  • どのような点数が目標となるのか、その実務上の目安
  • 点数を上げるための具体的な戦略。
  • 専門家である行政書士に相談するメリット。

目次

  1. 経営事項審査(経審)の点数とは?📒
  2. 経営事項審査の点数の仕組み💻
  3. 経営事項審査の点数の計算方法📅
  4. 経営事項審査の点数一覧と目安🔎
  5. 経営事項審査の点数を確認する方法✍️
  6. よくある質問(FAQ)📰
  7. まとめ📝
  8. 確認クイズ(3問)

経営事項審査(経審)の点数とは?

経営事項審査の概要

**経営事項審査(経審)**とは、公共工事を国や地方自治体から直接請け負おうとする建設業者が、必ず受けなければならない審査です。会社の「経営規模」「経営状況」「技術力」「その他・社会性など」の客観的な評価を通じて、企業としての総合力を数値化します。

この審査結果として算出されるのが、**総合評定値(P点)**と呼ばれる点数です。このP点が、公共工事の入札参加資格を得るための最も重要な要素となります。

点数の位置づけと重要性

経営事項審査の点数は、いわば建設会社の「成績表」です。各自治体や発注機関は、入札に参加する企業のP点を比較し、発注する工事の規模や難易度に見合った企業を選定します。

P点が高いほど、経営状態が安定し、技術力に優れた企業と評価され、より規模の大きな、あるいは利益率の高い公共工事を受注できる可能性が高まります。逆に、点数が低いと入札に参加できる工事が限られ、事業拡大が難しくなります。


経営事項審査の点数の仕組み

総合評定値(P点)とは

**総合評定値(P点)**は、経審の最終的な評価点であり、以下の4つの評価項目の点数を組み合わせて算出されます。

P=0.25X1​+0.15X2​+0.20Y+0.25Z+0.15W

この数式は一見複雑に見えますが、それぞれの項目が会社の総合力を多角的に評価していると理解してください。

点数の算出方法

P点は、以下の4つの評価項目の点数にそれぞれ重みをかけて算出されます。

  • 経営規模等評価(X)P点の円グラフ割合ブルー25%年間平均完成工事高(X1) P点の円グラフ割合レット15%自己資本等(X2)   会社の事業規模や売上高を評価する項目 
  • 経営状況分析(Y)P点の円グラフ割合イエロー20%:会社の財務状況や健全性を評価する項目。
  • 技術力(Z)P点の円グラフ割合グリーン25%:技術者や資格、技術力を評価する項目。
  • その他・社会性など(W)P点の円グラフ割合オレンジ15%:社会貢献性や法令遵守などを評価する項目。

評価項目

各評価項目はさらに細かく分類されます。

  • 経営規模等評価(X)
    • X1(完成工事高)P点の円グラフ割合ブルー25%:過去2年間の完成工事高を評価します。売上が多いほど高得点になります。
    • X2(自己資本額・平均利益額)P点の円グラフ割合レット15%:会社の自己資本と利益額を評価します。財務基盤が安定しているほど高得点になります。
  • 経営状況分析(Y)P点の円グラフ割合イエロー20%
    • 経営状況分析は、会社の財務状況を詳細に分析する項目です。全7つの経営指標を基に点数が算出されます。健全な経営を続けている会社ほど、Y点の評価が高くなります。
  • 技術力(Z)P点の円グラフ割合グリーン25%
    • このスコアは、技術職員の数や資格が主な評価対象です。一級や二級の施工管理技士などの資格保有者が多いほど、また勤続年数が長いほど高得点になります。
  • その他・社会性など(W)P点の円グラフ割合オレンジ15%
    • 会社の社会性や健全性を評価する項目です。社会保険の加入状況ISO認証の取得、工事における安全成績などが評価されます。

経営事項審査の点数の計算方法

ここでは、具体的な計算方法をさらに詳しく見ていきましょう。

経営規模等評価(X1, X2)

  • X1(完成工事高)
    • 過去2年間の完成工事高を算出して点数化します。業種(建築一式、土木一式など)ごとに点数が決まります。
    • 今回の総合評定値通知書では、土木一式 X1₌843 舗装 X1₌698 水道施設 X1₌397 となっております。
  • X2(自己資本額・平均利益額)
    • 直前の決算における自己資本額と、過去2年間の平均利益額を算出して点数化します。会社の安定性を測る重要な指標です。
    • 今回の総合評定値通知書では X2₌781 となっております。

経営状況分析(Y)

Y点は、以下の8つの経営指標を点数化し、その合計点をもとに算出されます。この分析は専門的な知識が不可欠なため、国土交通大臣の登録をうけた登録経営状況分析機関がになっております。これらの経営状況分析機関のうち、建設業者がいずれかの分析機関を選んで経営状況分析の申請を行うことになります。いずれの分析機関を選んでも結果は同じですが、申請の方法や分析手数料などに違いがあります。

  1. 純支払利息比率:借入金の返済能力を示します。売り上げに対してどのくらい利息の支払いに追われているかを表す指標です。
  2. 負債回転期間:借入金がどのくらいの期間で回収できるかを示します。
  3. 総資本売上総利益率:資本がどれだけ効率よく利益を生み出しているかを示します。
  4. 売上高経常利益率:会社の本業と財務活動を含めた通常の会社全体の収益性をはかる指標です。
  5. 自己資本対固定資産比率:会社の自己資本がどれだけ固定資産をまかなえているかをはかる指標です。
  6. 自己資本比率: 総資産のうち、返済不要な自己資金が占める割合です。
  7. 営業キャッシュフロー:会社が本業(建設業の工事請負など)で稼ぎ出したお金の流れを示す指標です。
  8. 利益剰余金:会社がこれまでにあげた利益から配当や税金などを差し引いた後に、社内に蓄積された利益の総額です。

今回の総合評定値通知書では、(Y)=959と経営状況分析機関において算出された評点です

元請完成工事高及び技術力(Z)

Z点は、以下の項目で点数化されます。

  • 元請完成工事高:過去の元請工事の実績が評価されます。
  • 技術職員数:会社の技術職員の総数を評価します。
  • 職員の資格:保有する資格の種類(一級、二級など)に応じて点数が加算されます。
  • 技術職員の継続的な雇用状況:勤続年数が長い技術者が多いほど加点されます。

今回の総合評定値通知書では、土木一式 Z₌822 舗装 Z₌780 水道施設 Z₌456 となっております。

その他の加点・社会性など(W)

W点は、以下の項目に応じて加点されます。

  • 社会保険の加入状況雇用保険、健康保険、厚生年金保険の加入状況の有無
  • 建設業退職金共済(建退共)の加入状況の有無
  • 退職一時金制度若しくは企業年金制度導入の有無
  • 法定外労働災害補償制度加入の有無
  • 若手技術職員の継続的な育成及び確保
  • 新規若年技術職員の育成及び確保
  • CPD単位取得数
  • 技術者数
  • 技能レベル向上者数
  • 技能者数
  • 控除対象者数
  • 女性の職業生活における活躍推進に関する法律に基づく認定の状況
  • 次世代育成支援対策推進法に基づく認定の状況
  • 青少年の雇用の促進等に関する法律に基づく認定の状況
  • 建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況
  • 営業年数
  • 民事再生法又は会社更生法の適用の有無
  • 防災協定の締結の有無
  • 営業停止処分の有無
  • 指示処分の有無
  • 監査の受審状況
  • 公認会計士等の数
  • 二級登録経理試験合格者等の数
  • 研究開発費(2期平均)
  • 建設機械の所有及びリース台数
  • エコアクッション21の認証の有無
  • ISO 9001(品質マネジメントシステム)の登録の有無
  • ISO 14001(環境マネジメントシステム)の登録の有無

今回の評点(W)=750とさまざまな項目の加入有無において算出された評点です

総合評定値P点の算式

先ほど示した数式に、それぞれの項目で計算された点数を代入して、最終的なP点が算出されます。

P = 0.25X1(25%) + 0.15X2 (15%)+ 0.20Y(20%) + 0.25Z(25%) + 0.15W(15%)

今回の総合評定値通知書では、この会社のP点は業種ごとに土木一式P⁼838・塗装P⁼792・水道施設P⁼635になります。

この総合評定値P点は、大阪府や各自治体の入札参加資格の客観的事項として格付けに使用されます。

土木一式P⁼0.25×843+0.15×781+0.20×959+0.25×822+0.15×750⁼838(小数点以下四捨五入)

舗装  P=0.25×698+0.15×781+0.20×959+0.25×785+0.15×750⁼792(小数点以下四捨五入)

水道施設P⁼0.25×397+0.15×781+0.20×959+0.25×456+0.15×750⁼635(小数点以下四捨五入)

この計算式からわかるように、すべての項目が同等に重要ではなく、特に**X1(完成工事高)25%とZ(技術力)25%**の比重が大きいことがわかります。

経営事項審査P点「どこを伸ばすべきか?」が見えてくる

すべての項目に均等に力を入れるのではなく、配点の高い項目を優先的に対策することで、効率的にP点を引き上げることができす。

自社の現状を分析し、**「どの項目が足りていないのか」「どこを優先して強化すべきか」**を把握することで、次回の経営事項審査に向けた具体的な改善策が見えてきます。

当事務所では、単なる手続き代行に留まらず、この計算式を熟知した代表行政書士が、貴社に最適なP点アップの戦略をご提案します。

P点アップの秘訣を知りたい」「等級を上げて、より大きな公共工事に挑戦したい」とお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。貴社の強みを最大限に活かし、P点アップをサポートいたします。


経営事項審査の点数一覧と目安

どの程度の点数が必要か?

必要な点数は、入札を希望する公共工事の規模発注機関によって異なります。一般的に、規模が大きく、競争率の高い工事ほど、求められるP点も高くなります。

以下に示す点数は、特定の公式な統計データではなく、多くの実務経験に基づいた一般的な目安です。

公共工事入札に必要な点数の目安

  • 600点未満:小規模な地元工事や指名競争入札が中心となります。
  • 700~850点:多くの地方自治体や県発注の工事で入札参加が可能です。(全業種の平均点は700ぐらいだそうです)
  • 900~1,200点:大規模な工事や国発注の工事でも競争力を持つことができます。
  • 1,200点以上:特に優良な企業と見なされ、最高難易度の工事にも挑戦できます。

実際の事例(例:建設業の規模別)

企業の規模従業員数(目安)完成工事高(目安)経審の目標点数(目安)
小規模5人以下1億円未満600~800点
中規模10~30人1億円~5億円800~1,000点
大規模50人以上10億円以上1,000点以上

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このように、自社の規模と将来的な目標に合わせて、具体的な点数の目標を定めることが重要です。


経営事項審査の点数を確認する方法

評価結果通知書の見方

経審が完了すると、**「総合評定値通知書」**が発行されます。この通知書には、P点だけでなく、X1, X2, Y, Z, Wの各項目ごとの点数が詳細に記載されています。

点数シートの読み解き方

このシートを丁寧に確認することで、自社の強みと弱みを把握できます。例えば、「Y点(経営状況)が低い」のであれば財務改善に、「Z点(技術力)が低い」のであれば資格取得を推進するなど、具体的な対策を立てるためのヒントが得られます。


よくある質問(FAQ)

点数は毎年変わるのか?

はい。経営事項審査の点数は、直前の決算データに基づいて計算されるため、毎年変動します。公共工事の入札に参加するには、定期的に経審を受審し、最新の点数を得る必要があります。

どうすれば点数を上げられるのか?

点数を上げるには、各評価項目を戦略的に改善する必要があります。

  • 売上を伸ばす(X1)
  • 自己資本を増やす(X2)
  • 会社の利益率を改善する(Y)
  • 技術者を増やし、資格取得を支援する(Z)
  • 社会保険の加入状況を整備する、ISO認証を取得する、安全管理を徹底する(W)

これらの対策を総合的に実行することで、点数の向上が期待できます。

行政書士に依頼すると何ができるのか?

経営事項審査は複雑な申請手続きと専門的な知識が必要です。行政書士に依頼することで、以下のメリットが得られます。

  • 煩雑な書類作成を代行:膨大な書類の作成を正確に行い、手続きの負担を大幅に軽減します。
  • 点数アップの戦略提案:会社の状況を分析し、点数を最大化するためのアドバイスを提供します。
  • スムーズな手続き:申請不備を防ぎ、手続きを迅速に進めることができます。

自社だけで点数アップを目指すのは困難な場合も多いため、専門家と連携することで、より確実かつ効率的に目標達成を目指せます。


まとめ

経営事項審査の点数は、公共工事を受注する建設会社にとって、事業の未来を左右する重要な指標です。単なる手続きではなく、自社の経営状況を客観的に見つめ直し、成長のための戦略を立てる絶好の機会と捉えましょう。

もし、経営事項審査の点数について不安がある、もっと点数を上げたいと考えているなら、一度専門家である行政書士に相談してみることをお勧めします。専門的な知見と経験に基づいたアドバイスで、あなたの会社の経営を力強くサポートしてくれるでしょう。

確認クイズ(3問)

経審の点数アップ戦略クイズ

記事の内容を振り返りながら、経審の点数アップに役立つ知識を試してみましょう!
3問のクイズに挑戦して、知識を定着させましょう。

【第1問】
記事の冒頭で説明されている「経営事項審査(経審)」では、会社のどのような要素が評価されるでしょうか?

  • 会社の売上のみ
  • 経営規模、財務状況、技術力、その他・社会性など
  • 社長の経歴や人柄
  • 過去に請け負った公共工事の数のみ

【第2問】
記事によると、「その他・社会性など(W点)」の評価項目に含まれないものは次のうちどれでしょう?

  • 社会保険の加入状況
  • ISO認証の取得状況
  • 営業年数
  • 負債回転期間

【第3問】
記事によると、総合評定値(P点)の計算式において、X1(完成工事高)と並んで最も大きな比重を占める評価項目は何でしょう?

  • 経営状況分析(Y)
  • 技術力(Z)
  • その他・社会性など(W)
  • 自己資本額及び利益額(X2)

全問終了です!お疲れ様でした!

経審は専門的な知識と複雑な手続きが必要です。点数アップの戦略立案から煩雑な書類作成まで、行政書士にご依頼いただくことで、お客様は本業に集中し、会社の成長に専念できます。

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